概要
前半はマルイVSR-10シリーズのシリンダーに付いている改造防止ピンの除去、通称:封印解除、の手順をお伝えします。
後半では、純正の脆弱なシリンダーの耐久性を向上させる為のファインチューニングの手順を解説します。
今回の題材はリアルショックですが、Gスペもプロスナもピストンとスプリングが多少違うだけですから、シリンダーについては、今回の記事が参考になると思います。
ある日突然
このVSR-10リアルショック、今まで、シリンダーは分解せずに、主に気密アップだけで50mシューティングをやって来ました。
ところが、ある日突然、シリンダーの気密が抜けました。
となると、ピストンリング周りに何らかの異常が起きたに違いありません。
シリンダーが分解出来ないとシリンダーのメンテが出来ません。
せっかくなので、シリンダーの封印解除の手順を解説します。
ドリルで削るだけでしょ?
と、私も以前は思ってました。
その結果、シリンダーを2本、買い直すハメになったので、その原因と対策を含めて細かく説明します。
事前準備として弾速計を持ってる事を前提に話します。
シリンダーというパワーの源に手を入れる事になるので、グリスの塗り方を少し変えただけでも予想以上にパワーアップする可能性があります。
作業を行う場合、その辺も含めて全て自己責任でお願いします。
改造防止ピンを削る
まずはセンターポンチでピン中心に凹みを付けます。今回はワンタッチタイプを使いました。
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注意点
ドリルを使う時、刃に切削油を付けましょう。油分が無いと刃がすぐにボロボロになります。鉄粉が飛び散るのを抑える効果もあります。
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刃の種類に鉄工用とステンレス用があります。硬さは勿論、刃の角度等、細かい所も違います。今回の場合は鉄工用で充分です。
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また、鉄工用の方が安いです。刃は消耗品ですから、ダメになったらすぐ交換しましょう。でないと素材を傷付けてしまいます。
もうひとつ、ドリルの回転速度は速すぎると刃の寿命が縮みます。低回転で軽く押し付けて少しずつ削るのがコツです。
まず1ミリの穴を開けるんですが、穴の深さは表面から8ミリです。これは、後で芋ネジを止めるネジ穴の為の深さです。
ノギスはこの後、ドリル刃の突き出し量を測る時にも使います。ノギスは昔ながらのアナログタイプが耐久性が高くお勧めです。写真のノギスは30年以上前に買った物です。
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ノギスで深さを測る時はノギスの尻尾のような
この部分を使います。この尻尾はデプスバーといいます。
電動ドリルは一般的な普及型の物で充分です。有名メーカーのマキタから選ぶならあまり高すぎないこの辺とかですかね↓Amazonで見てみる↓
という訳で、ドリルの刃をチャックから8ミリ出して、穴開け開始です。
1ミリ、1.5ミリ、2ミリ、2.5ミリと小刻みに穴を広げます。
ピンバイスがあれば、最初はもっと細い0.5mm辺りから始めれば、より細かく中心点を狙えるので失敗のリスクを減らせます。
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8ミリまで深く掘るのは2.5ミリまでです。後で芋ネジ用の3ミリのタップを立てるので、2.5ミリが下穴になります。
改造防止ピンの直径は3.2ミリです。3.2ミリの刃でピンの上部(深さ約1ミリ)を削り、その後、下の写真のようなロータリーヤスリで周りに残っている薄くなったピンの頭を削り取ります。
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かなり薄くなったら、出来ればシリンダーオープナーでシリンダーヘッドを少し回してみます。
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この市販品が欠品している場合があるので、シリンダーオープナーの作り方をまとめました。こちらです↓
このようにシリンダーヘッドにもうひとつ穴を開けて先細プライヤーで回す方法もあります。
もうひとつの穴は、穴径約3mm、深さ3mm以下です。先細プライヤーが入れば良いので大体で大丈夫です、が・・・
深く掘り過ぎるとシリンダーヘッドを貫通してしまうのでデプスバーで穴の深さをこまめに確認しましょう。
では本編を続けます。
もし、回らないようならもう少し削ります。
少し回すと、ピンの一部が薄く残っているのが見えるでしょうか。これを少しずつ削り落とします。
シリンダー側を傷付けないように、少しずつ削って下さい。
そして、回るようになったとしても、回した時にガリガリ言うようなら、もう少し削りましょう。
そのまま回すとシリンダーのネジ山を削ってしまいます。スムーズに回るようになってからシリンダーヘッドを外します。
この時、マルイが純正シリンダーヘッドをどのくらいの締め付けトルクで締め付けているか、よく確認しておいて下さい。後で重要になります。
シリンダーヘッドのバリ取り
そしてやっとシリンダーヘッドが外れたとしても、恐らくバリが残っています。
1番細いマイナスドライバーや千枚通し等でネジ山の谷部分を擦ってみて下さい。引っ掛かりますよね。この引っ掛かりを無くさないと、シリンダーのネジ山が削れて、シリンダーヘッドがスッポ抜けるようになってしまいます。
色々な形状の刃を使って、引っ掛かりが無くなるまで、少しずつ、丁寧に、慎重に削ります。削るのは穴の周りの引っ掛かりがある所だけですから、注意して下さい。
リューターがあるなら是非使って下さい。その方が良いです。今回は、リューター無しでも一応出来るよ、という一例です。
千枚通しで擦ると、まだ少し引っ掛かります。
最後は目が細かい棒ヤスリで、引っ掛かりが完全に無くなるまで削ります。
これが出来たら
封印の穴にネジ穴を作る
改造防止ピンが無くなったので、このまま、マルイの新品の状態と同じ締め付けトルクで締めても、すぐに緩んでしまいます。
先程、マルイ純正の締め付けトルクを確認してもらったのは、この為です。
つまり、あんなにユルユルのトルクで締めないと、本来の規格の半分の深さしかない純正シリンダーのネジ山では、応力に耐えられないのです。
耐えられなくなってネジ山が壊れて使用不可になったシリンダーが、ウチに二本あります。
芋ネジの用意
ホームセンターで買って来た芋ネジです。両方共太さはM3ですが、長さはひとつが5mm、もうひとつが6mmです。同じサイズの物がAmazonにもありました。
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ネジ穴を作る時には、ハンドタップを使います。後述しますが、タップは実績のあるメーカーの物がオススメです。
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慣れていないと、どの位、深く掘っても良いのか分からず、つい深く掘り過ぎてしまうかも知れません。
その対策として念の為、少し長めのM3×6のイモネジも買っておいた、という事です。
使うのは、M3のタップとタップハンドル、芋ネジと芋ネジを回す工具、ピンセットは念の為です。
私のタップハンドルはもうボロくなってるのでコツが要ります。始めての方には先程のハンドタップセットがお勧めです。
最初に、改造防止ピンに深さ8ミリのM2.5の穴を開けたのは、このネジ切りの下穴にする為です。
まずはタップの刃をハンドル無しで指だけで入る所まで入れます。
指で回らなくなったら、ハンドルを付けて、軽く押しながら、時計回しに回して、ネジ山を作っていきます。特に最初は直角に入っているか注意して下さい。
また、手応えが少し重くなったら、一旦反対向きに回したり、タップを抜いて切り屑を排出したりして、ネジ山面に切り屑を挟み込まないように注意します。
少し深くなったら、短い方の芋ネジを入れてみて深さを確認します。この繰り返しです。
撮影の為に横に向けてますが、作業中は縦向きにして、部品が上、タップを下にした方が、切り屑がスムーズに排出されます。
少し掘って確認の繰り返し。
また繰り返し。この確認を小まめにやれば失敗の確率が下がります。
そろそろかな、という位になったら、一度、穴の奥をパーツクリーナー等で洗浄して、切り屑を綺麗に落とします。
ここでは普通の金属用のパーツクリーナーでも良いんですが、プラスチックを溶かさないタイプを買っておけばエアガンのメンテでは重宝します。
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そして、芋ネジを少しだけ強く締めてみます。すると止まった位置より更に少しだけ奥に入ります。
こんな感じに、ネジの頭がシリンダーヘッドの外周と同じか、微妙に低い位になれば完成です。
念の為、もう一度洗浄しましょう。古い歯ブラシ等にパーツクリーナーを付けてほじくっても良いでしょう。
これで、シリンダーのネジ山の負担を最小限に抑えて固定する事が出来るようになりました。
この作業での注意点はタップを折らない事です。折れたタップが穴の中に残ってしまうと取り出すのは不可能です。
ちゃんとしたタップが良い、と前述したのはこの為です。
低品質なタップは買わない、古いタップは交換する、強い力や斜めの力を入れない、等に注意して下さい。
シリンダーのバリ取り
バラして綺麗に洗った純正シリンダーです。内側も綺麗に洗いましょう。パーツクリーナーでも良いし、ダイソーで売ってる細長いお掃除棒と中性洗剤でも良いです。
近所にダイソーがなければこんなのもあります。
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内側を覗いて見ると・・
これがVSR-10シリーズのお約束!シリンダーのバリです。
この方が良く見えるかな?
こんな物が切り欠きの先端部分の空気の圧縮が始まる大切な所に出っ張っているんです!
抵抗にはなるし、ピストンスピードも下がるし、Oリングは傷付くし、圧縮タイミングはズレるし、ロクな事がありません。
この程度の処理、マルイの技術ならすぐに改善出来そうな気もしますが。
取り敢えず、これを綺麗に削り落としましょう。
ここで、何処にバリがあるのか、確認しておきます。切り欠き内側の縁に沿って、綿棒を滑らせます。バリのある所で引っ掛かって止まります。
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引っ掛かった所にマジックで印を付けます。
これはプロチューナーのtascoTitanさんの動画で学んだ方法です。
バリを削るのは、目の細かいダイヤモンドヤスリを使いました。
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余計な所を傷付けないように、少しずつ慎重に削ります。
側面部分にも、結構バリがありました。バリが取れると手応えが変わるので分かると思います。分からない時は、こまめに綿棒で確認しましょう。
だいたいこんなもんじゃないですかね。
この方が良く見えるかな?
もう一度、綿棒で確認して、引っ掛かりが無くなっていれば完了です。
もっと丁寧に仕上げたい場合は、目の細かい耐水ペーパー(#800〜1200位)を丸い棒に巻いて仕上げる方法もあります。
3本の純正スプリングの比較
せっかくなので、今回取り出したスプリングを他のスプリングと比較してみましょう。
全て純正スプリングです。
1番長いのが、今回バラした買って数ヶ月のリアルショック用。
2番目に長いのが、中古のリアルショックシリンダーに入っていた、かなり使い込んだと思われるリアルショック用。
1番短いのが、Gスペ加速シリンダーチューンの時に、初速測定にのみ使った新品に近い状態のGスペ用。
線径(コイル線の太さ)は全て1.2mmです。ここにはありませんが、プロスナの場合は1.0mmの筈です。
こうしてみると、約5ミリ刻みで長さが違うようですね。
つまり、新品同士のリアルショックとGスペのスプリングを比べると、約10ミリ、リアルショックの方が自由長が長い、という感じでしょうか。
リアルショック用とGスペ用は、線径とピッチは同じなので、自由長の違いだけのようですね。
加速シリンダーテストの時にリアルショック用のスプリングの方が、強ホップ時の初速が伸びたのは、これの影響もありそうです。
スプリングに関しては、マルイはパーツでは売ってくれませんが、所詮工業製品ですからね。汎用品として買う事が出来ます。
とりあえず、リアルショックやGスペと同じ線径1.2mmの物です。Amazonで見てみる↓
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これだけでも太いスプリングを短めで使ったり、細いスプリングを長めで使ったり、と色々遊べますね(^^)
ピストンに穴が開いていた!
バラしてみたら、何とピストンヘッドに穴が開いていました。これでは空気が抜けるのも当然です。
何で穴なんて開いたのか?心当たりはあります。
シリンダーをまだ封印解除していない頃、ピストンヘッドがどのくらいの位置まで来ているのか知りたくて、細い棒をノズルから入れて突ついてみた事があったんです。そんなに強く突いた訳じゃないんですが。
その時に傷が付いたのか、穴が開いたのか?細かくは分かりませんが、ピストンもそれ程頑丈では無い、という事が良く分かりました。
そのうち、プラリペアで穴を塞いで再使用しましょう。
で、余っていた、もうひとつのピストンに交換して気密チェックをした所、
圧縮エアを全く逃しません!1分待ってもピストンが全く動きません。
Gスペであれほど苦労した完璧な気密を、いとも簡単に達成してしまいました。Gスペよりスプリングが強いので、高圧縮が掛かっている筈なのに!
こうなると、Gスペも完璧な気密を目指したくなりますね。だって、強ホップ時の初速が全然違いますから。
今回の作業は以上です。後日改めて初速を確認します。
機関部に手を入れた時は、初速を確認するまでバラし保管、つまり分解して撃てない状態で保管するようにしています。もし初速オーバーしてたら、保管してるだけでも違法になるので。
では今回はこの辺で。
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コメント
ピストンヘッドの穴は圧縮を緩和し、衝撃を強め玉をバレル内にとどめ命中精度を高める為の役割を果たしていると思います、リアルショック以外は孔あいて無いのでは?
なるほど。リアルショックの用途を考えれば、衝撃を強める効果はありそうですね。コメントありがとうございました。
理解してくださり有り難うございます、そこで提案ですがウエイトを外し孔を塞いた時の初速と飛距離は多分Gスペを上回るのでは?(スプリングがvsr-10系の中では長く太い)命中精度はいまの処実証試験してないので考察までに、近く上記内容プラス4mmスペーサと2mmのクッション取り付け挑みます
初速オーバーしないようにいかに飛ばしていかに当てるか、というのは永遠のテーマだと思います。その過程が1番楽しかったりします。いろいろ試してみて下さい。