今回はシリンダーの加工について解説します。
まず最初にノーマルのシリンダーの弱点について説明します。
ノーマルシリンダーの前端部のネジ山は高さが本来の規格の半分程度しかありません。
上の写真のシリンダーはヤフオクで買ったリアルショック用の中古シリンダーです。買った時は、まだ改造防止ピンが付いていました。
つまり前オーナーは、シリンダーの封印を解除せずに使っていたのに、シリンダーヘッドが段々と前に飛び出て来て、改造防止ピンが穴を広げてしまったのだろう、と推測できます。
リアルショックのピストンが重いのは有名ですが、スプリングもVSR-10シリーズ中最強です。
リアルショックとGスペックのスプリングを測定した所、線径とピッチは同じ、つまりスプリングレートは同じで、自由長だけがリアルショックの方が約6.5ミリ長いです。
スプリングレートが同じなので、1ミリ縮める為に必要な力は同じです。
自由長が長いリアルショックではスプリングは、ストローク後半になってもスプリングが更に伸びようとする力が強く残っています。
恐らく、リアルショックの場合、リコイルギミックの為に、ピストンヘッドをシリンダーヘッドに強く打つける必要があったのでしょう。
Gスペやプロスナはエアダンパーが効き始めるストローク終盤には、スプリングの伸展力は弱まっているので、ピストンヘッドがシリンダーヘッドに打つかる勢いも弱いと思います。
このリアルショックの中古シリンダー、何発くらい撃ったら、こうなったのか?は知る由もありませんが、純正ですら、この程度の強度しか無いとしたら、ネジ山の固定力だけに頼って重いピストンとハードスプリングを装着すると、シリンダーのネジ山が保たないと思います。
もしかしたら、プロスナとGスペのエアダンパーは、消音効果以上にシリンダーのネジ山保護の役割の方が重要なのかも知れません。
という訳で、ただでさえ弱いシリンダーのネジ山には余計なテンションは掛けたくありません。
そこでシリンダーヘッドの締め付けトルクを純正と同程度、つまり簡単に緩んでしまう程度にしか締め付けない事にしました。
となると必要なのは、改造防止ピンの代わりとなる緩み止めです。
改造防止ピンの穴にタップを立てて、ホームセンターで買った芋ネジを付けてみました。
芋ネジは太さはM3ですが、長さを5ミリと6ミリの2種類買いました。
2種類買ったのは、タップ立ての深さが丁度良い加減に出来なかった時に微調整する為です。
もし自分でやる方は、改造防止ピンの頭を削り落とした所に、2.5ミリの下穴を約6ミリの深さまで開けて、それからM3のタップを立てて下さい。
この時、芋ネジの頭が1ミリ位飛び出る位の深さでタップを止めないと、芋ネジがストッパーとしての役目を果たさなくなってしまいます。
タップは少しずつ立てて、まだ浅いかな?と言う辺りで芋ネジを付けてみる、という工程を何度も繰り返せば失敗する事も無いと思います。
以上で最重要な加工は終了です。
あとはピストン重量とスプリングカラーのセッティングだけなので、ホップ強度と弾速計を見ながら、どこまで重量とカラーを弱く出来るか?という調整だけです。
簡単に言えば、ピストンを恐ろしい重さにして、超強力なスプリングで押し出せば、強いホップを掛けても押し出せる、つまり超重量弾を飛ばせる事になります。
が、それではシリンダーのネジ山が保ちません。ノーマルのリアルショックですら、沢山撃つと保たないんですから。
私の以前のGスペはピストン重量を110gにして、エアダンパーはカット、強めのスプリングで規制値ギリギリの弾速で超重量弾を飛ばしていました。
確かに飛ばすだけなら飛びましたが、32 センチのフライパンに良く当たるか?と言えば、全然ダメでした。
そして1000発ほど撃った所で、シリンダーのネジ山が耐えきれなくなり、シリンダーヘッドがすっぽ抜けました。
その時の症状は、トリガーを引くと、シアが落ちる直前にトリガーがかなり重くなる、という感じでした。
その後トリガーが完全に引けなくなりました。1000発でこの症状が出たんです。そんな耐久性では安心して遊べません。一回50mシューティングに行けば終了です。
でも重量弾は飛ばしたい。40m以上の距離で0.2gと0.25gで撃ち比べた事があれば、重量弾の直進性の強さがイメージ出来ると思います。
軽量弾も重量弾も直径は同じなので、空気抵抗も同じです。ならば重い方が空気抵抗による減速が少ないからです。
ここから先の挑戦は、どうやって、ホップ回転数を上げつつ、ピストン重量を落とし、スプリングテンションを下げて、ピストンストローク終盤のピストンの慣性力を小さくするか?
言い換えれば、ピストンとシリンダーヘッドが強く打つかる事を防げるか?という事がテーマです。
具体的な数値については、これから実験を重ねてみてインナーバレル編の記事で書く予定です。
次にシリンダーの加工について。
弾がチャンバーから射出されるのは、ピストンストロークが始まってから比較的早い段階だそうです。自分で確認出来ないので某有名チューナーさんに聞きました。
ピストンストロークの後半は、インナーバレル内で弾が加速する為の余剰エネルギーとして、圧縮空気が弾を押し出します。
ホップ回転数を上げる為には、ピストンストローク前半での圧縮空気圧を上げる必要があります。
ストローク前半のピストンの慣性モーメントを上げれば良い事になります。私の考えた方法は2つです。
ピストンを重くするか、ピストンスピードを上げるか、です。
ただ、ピストンを重くするとピストンスピードを維持する為には、スプリングのプリロードも上げる必要があります。スプリングレートでなく敢えてプリロードと書いたのは、ストローク前半のピストンスピードを意識した為です。
そこで加速シリンダーです。圧縮が始まるタイミングが遅くなれば、ピストンが加速する距離が増えます。その距離に関し、次項で確認します。
各部の寸法について
次に加速シリンダーにする為の加工を施します。
以上のデータを元にシリンダーの容積、つまり排気量を算出します。
まず排気ポートを開ける前のノーマル状態の場合。
リアルショックのようにエアダンパーロッドが無い、或いはロッドを切除した場合、
約31284立方mmとなります。
プロスナやGスペのようにエアダンパーロッドがある場合、その分の実質体積172立方mmとストローク16mmを差し引いて
約25030立方mmとなります。
次に純正の内径6.08mmインナーバレルの容積は
430ミリバレルの場合、約12484立方mm
303ミリバレルの場合、約8797立方mm
となります。
となると、
シリンダー排気量:バレル内容積
の比率は
プロスナ、2:1
リアルショック、2.5:1
Gスペック、2.8:1
となります。(端数は四捨五入しました)
次に加速シリンダー用の排気ポートを開けた後のシリンダー容積は、エアダンパーロッドがある前提では、有効圧縮ストロークは43.8mmなので
約16477立方mmの排気量となります。
この排気量を元に理想的なインナーバレル長を算出すると(バレル内断面積は29平方mmを使います)
シリンダー:バレルの体積比が
プロスナ2:1の場合、284mm
リアルショック2.5:1の場合、227mm
Gスペック2.8:1の場合、203mm
となります。
この後はバレルを少しずつ切りながら最適な長さを探す作業です。
次回はインナーバレル編です。実験結果を報告出来ると思います。
では今回はこの辺で。
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