概要
今回は失敗解説です。何が失敗なのか、どうしたら解決出来そうか、を解説します。
カスタムやチューニングをしていると失敗する事の方が多いのが現実です。
試してみたけどダメだった、それじゃ次はこうしてみよう、という試行錯誤も面白いと思います。
偶然上手くいっただけでは「こっちの組み合わせだったらどうなったんだろう?」という疑問が据え置きですからね。
銃の改造なんて実銃だったら違法ですからね。エアガンならではの特権として思う存分楽しませてもらいます。
という訳で今回はSR96(APS-3インナーバレル仕様)の問題点の解説と改善方法について考察します。
前回、命中精度向上計画その9↓では
SR96にAPS-3のインナーバレルを入れてみました。
本大会前に銃を弄ってるだけじゃ不味くね?という焦りと、とりあえず撃てる状態にはなったので練習を再開しました。
前回お話ししたように無理して5メートル先の6ミリBB弾を狙ったりせず、1センチサイコロで良いから必ず中てる!という練習です。
中たればラッキー!な6ミリより、失中したら自己嫌悪な1センチの方が緊張と集中という点では練習効果が高いような気がします。
ところが練習再開して暫く撃っていると、この銃の問題点が分かってきました。
銃が止まらない!
問題点とは立射での据銃姿勢で銃がやたらと揺れる事です。その原因は・・・
前回お話ししたように現状でのスプリングは
線径1.3ミリのスプリングに更に下駄(スプリングスペーサー)を履かせています。線径1.3ミリという太さは私が今までバラした既製品の銃の中にはありませんでした。
多くの銃がノーマル状態では1.0か1.2です。例えばVSR-10のプロスナは1.0、Gスペックとリアルショックは1.2です。
プロスナを撃った後、Gスペックやリアルショックを撃つとコッキングの重さが2倍くらいになったように感じる人も居ると思います。
1.3のスプリングはそれを更に2倍にしたような感覚を覚えます。SR96のノーマルスプリングは1.0なので4倍です。
それでも下駄が無ければコッキングが重いのは引き切りだけなのでそこまで気にならないんですが、下駄があるとコッキングの引きはかなり重いです。
その要因として
- 短いインナーバレルで弾の加速距離が短い
- フルサイズシリンダーなのでピストンの加速距離も短い
- その状態で弾速を出そうとするとかなり強いスプリング反発力が必要
つまり、弾速を上げる為の仕事をバレル長・シリンダー容量・スプリングで分担してバランス良くやればそれぞれの負担は少ないのに、
バレルとシリンダーは足を引っ張っているだけでスプリングだけに過酷な重労働を強いているんです。
役割分担のバランスが悪いんです。最近話題になった某ブラック企業みたいに。
その結果コッキングが筋トレ!という程の重さになってしまいました。特に練習で100発くらいぶっ通しで撃つ時。
下駄無しで軽くコッキング出来てた頃は50発を超えた頃から体が慣れてきて後半の方がよく中たったんですが、この重さでは50発も撃ったら腕はパンパン、銃はプルプルです。
別に筋トレは嫌いじゃないので筋トレが目的ならこれでも良いんです。腕パンパンなんて運動やってた頃を思い出して心地良いくらいです。
問題は、そんな状態では腕も銃もプルプルしちゃってリラックスやボーンサポートなんて無理!ましてや精密射撃なんて到底無理!という事です。
おそらく筋力の問題ではなく筋肉がリラックスする事、つまり筋繊維内の疲労物質(乳酸)を減らして筋痙攣(プルプル)が起き難い状態を作る事が重要なんだと思います。
いくらボーンサポートするから筋力は関係ないと言っても、それは完全脱力すれば良いという事ではありません。
据銃姿勢を維持する為の筋力、俗に言うインナーマッスルの適度な筋緊張は必要だし、コッキングの際に使う上肢帯筋が過度に疲労すればボーンサポートにも影響します。
公式競技では競技で撃つ弾数は46発、試射や弾ポロ等による捨て弾を合わせても60発くらいあれば事足りますが、
普段の練習で銃の揺れを遅く小さくする感覚、そのタイミングを逃さず上手くトリガリングする感覚、この感覚を体に染み込ませる為には
毎日の練習で集中して100発くらいは撃って練習後半で体に染み込ませた「銃が止まる感覚」をなるべくコールド状態から発揮出来るようにする事が、試合での高得点に結び付くような気がします。
その為にも「射手に余計な負担を掛けない銃」が必要だと思いました。
競技銃の優先順位
ただ、これは重いコッキングによって疲労してしまう人間側の問題であって銃自体の精度はそこそこ良いような気がします。
10mで実射計測した訳じゃないので数値化は出来ませんが、12倍スコープで見ていれば何処に中たったか?が見えます。
銃が揺れたら揺れたなりのレティクル中心にちゃんと飛んでいるように見えました。
とは言え、これはAPS競技銃です。
競技銃の性能は機械としての精度以外にも「人間の能力の低さを補って高成績に結び付ける」事も競技の道具としての役割です。
機械単体としての高性能より、どちらかと言えば人間を含めたトータル性能、すなわち「立射で中たる事」の方が重要です。
その為にマルゼンはボーンサポートする為のストックを作ったんだし。
一部の上級者を除けばフライヤーによって着弾が散る幅より、人間の体がフラフラしてるせいで散る幅の方が遥かに大きいですからね。
いつか上手くなって「フライヤーのせいでブルズ98だった!」なんて言ってみたいもんです。
機械単体の精度が高い銃、つまり置き撃ちで中たる銃も浪漫としては大好きなんですが・・・
それはAPS以外の所でやる事にします。
解決策を考える
では競技銃としての高性能、つまり人間の性能の低さを補いつつ、極端なフライヤーが出ない程度に銃単体での精度も欲しい、
この2つの要件を満たす銃を作るプランを考えてみます。
今回の最優先事項としてはコッキングを軽くする事ですが、これは多分可能です。
50mシューティング用VSR-10Gスペックの時にやった加速シリンダーです。
ピストンがめっちゃ加速するから加速シリンダーといいます。(ホントかよ⁉︎)
圧縮工程の有効ストロークが短くなるので排気量が減り、短いインナーバレルが必要になりますが
ピストンスピードが上がった分、強烈な圧縮圧力で押し出すので、弾保持と気密さえしっかりしていれば強いスプリングを使わずに弾を急加速させる事が出来ます。
じゃあ、何で最初からそうしなかったのか?
加速シリンダーの問題点は、高い圧縮圧力を作り出すのがピストンストロークの後半という点です。
そもそも今回、線径1.3mmなどという高レートなスプリングまで作ってフル容量のノーマルシリンダーを使ったのは
ピストンがシリンダーヘッドに激突する前に弾をマズルから射出したかったからです。
共振の元である振動が発生する前に弾を出しちゃえ!という事です。
マルゼンAPSライフルのシリンダーはVSR-10のシリンダーよりも総じて細長いディメンションです。
それなら長いストロークを有効に使えば、そこそこの強さのスプリングでもストローク前半だけで高い圧縮圧力を出せるんじゃないか?
と思ったんですが・・・机上の空論、というか立射との相性が悪かったようです。
加速シリンダーを採用するとなると、ピストンがシリンダーヘッドに当たる前に弾を射出する案は諦めた方が良さそうです。
それでも短いインナーバレルは、そもそも共振の振幅が小さい筈、という利点は残ります。
APS-3の場合は畜気式なので直接比較出来ませんが、APS-1の命中精度はAPS-3に勝るとも劣らないですからね。
さらに立射で行う競技だという事を考えれば、弾がインナーバレルの中を移動している時間が短い、というのも大きな利点です。
ライフルで高倍率スコープを使っている人なら、据銃の最中に銃がどれほど小刻みに動き回っているか、ウンザリするほど見ていると思います。
あれが弾道に影響しない訳ないですよね!あんなに動くなら弾がインナーバレルの内壁に当たっている可能性は高いと思います。
インナーバレルは真鍮・ステンレス・アルミ製なのでゴム製のホップパッキンのような摩擦力はありませんが、ホップパッキン通過時より高速で内壁に当たります。
その時、多少なりとも弾に回転運動が起こると思います。
内壁に当たっている時間が長ければ回転運動が強くなるかも知れません。”長ければ”とはライフルの長いインナーバレルなら、という意味です。
共振に加えて、これもAPSライフルのフライヤーの一因ではないか?と思っています。
共振にしろ立射姿勢での揺れにしろ、共通しているのは弾がインナーバレル内壁に触れる事による悪影響です。
もし、インナーバレル内壁が摩擦なんて起きない程ツルッツルだったら・・・?
弾に回転運動が起こったとしても強い(高速な)回転にはならないかもしれません。
私がインナーバレルによく使う「花咲かG」は磨いた所がピカピカに光ります。光沢が出るという事は、それだけ表面がツルツルになったから光を反射しているという事だと思います。
インナーバレル研磨の記事はこちら↓
(後日追記:花咲かGに含まれるワックスの酸化に関して興味深い話をお聞きしました。インナーバレルの内面処理については研究の余地がありそうです。いずれ他の方法も試してみます。)
また、APS-3 LEのテフロンコートのインナーバレルの話ですが、テフロンとはフッ素樹脂の事です。
バイクや車が好きな方ならフッ素系潤滑剤を使った経験がある方も多いと思います。
私はバイクのサスペンションに使った時に「路面に吸い付くような乗り心地」に感動し、フッ素系潤滑剤の潤滑性能の高さを実感しました。
APS-3のテフロンコートがこれと同じか?は分かりませんが、滑りが良くなるなら「ツルツルだから弾に余計な回転を与えない」という効果が期待出来るかもしれません。
という訳で・・・
フルサイズシリンダーを使い、鬼スプリングで初速を出すプランは諦めて加速シリンダーを採用します。
予備のシリンダーが欲しかったのでマルゼンに電話したら、SR96用のノーマルシリンダーの在庫が一個ならある!との事で早速買って来ました。
もし、マルゼンにシリンダーの在庫が無かったら蔵前工房舎のシリンダーを買おうと思っていました。
蔵前工房舎のシリンダーをAmazonで見てみる↓
純正シリンダーが購入出来たので、これで加速シリンダーを作ります。
まとめ
甘い理想を思い描いていた「共振発生前に弾をマズルから射出」は断念しましたが「短いバレルによる共振低減」と「弾がインナーバレル内に居る時間を減らす」は実現出来そうです。
VSR-10.Gスペック加速シリンダー仕様の時はノーマルでは到底不可能な記録を出せたし、依託射撃で行う50mシューティングの時は気にしなかった「立射だから揺れ幅が大きい」に対しても短いインナーバレルによるメリットはあると期待しています。
まだシリンダーを買ってきただけなので、加速ポートの位置をどうするか?とか
ボア×ストローク比がVSR-10と違うのに同じような加速ポートで良いのか?とか
いろいろ迷う事もありますがホップが無いのでピストンの重量調整は不要になると思います。
ただ、今から加速シリンダーを作り始めて調整まで行うと今年の本大会に向けた練習時間が減ってしまいます。
とりあえず今はノーマルのインナーバレルとシリンダーを組んで本大会に向けて練習して、加速シリンダーを作ったりAPS-3バレルの組み込みと調整をするのは本大会が終わった後にしようかな、と思っています。
大会で点数を出す事を考えれば、今は人間のチューニングをすべきです。私はまだ「銃さえ良ければ満射出来る!」ようなウデではないので。
でも気になってしょうがないんですよ。
銃を固定すれば必ずXをブチ抜ける高精度な銃があったら、どんなに気持ちいいだろう・・・って。
では今回はこの辺で(^^)/~~~
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