概要
今回はAPSのライフルではなくハンドガンの方の話です。
要約すると、5mでゼロインしてあるAPS-3で6〜10mを撃つ時に狙点をどうすれば良いのか?を実射して検証します。
シルエットって何?
知らない方も居るでしょうから、シルエットって何なの?という説明をしておきます。
APSハンドガンには、ブルズアイ・プレート・シルエットという3種類の競技があります。
シルエットはAPS全競技の中で唯一、標的までの距離が変わる種目です。
このように、6・7・8・9・10メートルの位置に置かれたターゲットを立射・伏射で撃つという競技です。
写真右側に5本並んでいるのがシルエットターゲットの台座です。(バトンレンジにて)
この台座の高い所(上段)と低い所(下段)に
こんな感じのアルミ製のターゲットが置いてあります。
マック堺さんが「3×3センチのシルエットターゲットを撃ってみて着弾位置を確認します」ってやってるヤツです。
これ、中たると「キィーン」という気持ち良い音がします。形状と重量も絶妙で、BB弾が中たった時に派手に吹っ飛ぶように設計してあるようです。
ブルズアイのペーパーターゲットがシビアに数値を記録する為のターゲットなのに対し、ハンドガンのシルエットとライフルのムーバーは、「射手を楽しませよう」という気遣いが感じられます。
実際かなり爽快ですしね(^^)
オリンピックを目指すならともかく、趣味としては「楽しい」要素は重要です。そこを解ってくれるJASGさん、ありがとうございます。
APSライフル競技ムーバーに関する記事はこちら↓
右の黒い棒の上に載っている上段ターゲットは立射用、下の方の低い位置にあるのが伏射用のターゲットです。
立射と伏射についてはいずれまた話す事にして今回のメインテーマは弾のドロップ量です。
ドロップ量とは?
今どきのサバゲー向けのエアガンはホップ付が当たり前になり、ホップの性能如何によって飛距離や命中精度が左右される事も多々あります。
ホップがよく効く銃の場合、10m程度なら重量弾を使ったとしても、ほぼ直線弾道で飛びます。
しかし、APS-3にはホップはありません。ホップが不要な至近距離ならノンホップの方が精度が出せる、という設計思想のようです。
弾に余計な運動をさせず不安定要素を減らす、という事ですかね。
このようなノンホップの銃の弾道は、重力に従い段々と落下する放物線を描きます。
実弾が重力に引かれて落下するのと同じです。
APSのライフル・ハンドガン全競技の内、距離に合わせて落下量(ドロップ量)を計算し、狙点を上下に変化させなければならないのはシルエットだけです。
そのドロップ量を実測してみよう、というのが今回の主旨です。
初速測定
ドロップ量は初速によっても変化しますから、現状でのこの個体の初速を測っておきます。そこそこ使い込んではいますが、グリップすら変えてないノーマルです。
使う弾はマルゼンの赤箱(スーパーグランドマスター弾0.29g)です。
とりあえず5発、測りました。
5発中、最大値は0.835jでした。
5発の数値は、0.821・0.805・0.835・0.828・0.803(j)でした。平均値は約0.818jです。
・・・出来れば初速変動幅は0.02j位に抑えたいですね。10mでの集弾性に多少の影響があるかも知れませんが、本音を言えば銃のチューニング自体に興味があります。
実射方法
場所はいつもの自宅裏の10m射場です。
APSライフルでの経験に倣い、三脚を2台使って依託射撃をします。
今回は射座から標的までの距離を変えるので、標的を移動出来るようにしました。
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ブルズアイ用のペーパーターゲットで着弾位置を記録します。
もちろん実射でもマルゼンの赤箱(スーパーグランドマスター弾)を使います。
精密射撃に使える高精度な弾の中で、なるべく軽い弾(ドロップが少ないから)を選びました。
軽量弾の中ではマルイのスペリオールも良い弾ですが、保管環境に左右されず安定した精度の出せるプラ弾のデータが欲しかったので。
残念な事に・・・
実射結果の前に謝っておかなければなりません。
私は視力が低いです。おまけに乱視もあります。なので・・・
ノーマルのAPS-3のようなノッチサイト型のオープンサイトだと、眼鏡をしていても小さな標的がボヤけてよく見えません。
同じオープンサイトでもライフルのマイクロサイトなら、ピンホール効果の恩恵でよく見えるんですが・・・。
そんな状態で標的を見ているので、狙いたい所にちゃんとサイトを合わせられているか?という精度はかなり低いです。
依託射撃なのにそこまで散るか⁉︎という標的も多々ありますが、半分くらいは視力の影響です。あとはウデと風(この日は風が結構ありました)の影響ですかね。
とは言え、2019年の本大会で198点(なんと1発外しただけ!)を出したリスキー加藤さんも乱視があるとAPSラジオで仰られていたので、やっぱりウデの影響が9割に訂正します(^^;;
実射結果
一枚のターゲットペーパーに6発撃ちました。距離は5・6・7・8・9・10mです。
まず5mで6時照準用のゼロインをしました。
黒丸の下端部を狙った時に真ん中に中たるように調整する、という事です。
ブルズアイターゲットの黒丸は直径約2センチ(厳密には22ミリ)なので、狙点より約1センチ上に着弾するようにゼロイン出来れば理想的です。
シルエットでのメリットは、弾がドロップする距離になったらセンター照準に切り替えられる事です。
デメリットは、視力が低いと黒丸の輪郭がボヤけて、黒丸の下端部にちゃんと合わせられているのか分からない事ですかね。
まぁ、本番で黒丸を撃つのは5mなので気にしない事にしましょう。
ゼロインが出来た後、6m〜10mを6時照準で撃ち、その後10m〜5mをセンター照準で撃ち、最後の1枚で練習用のG&G0.28gプラ弾の着弾位置の確認をしました。
その結果は・・・
まずは5mから。撃った順序としては上段は6時照準で狙いました。上段の左がゼロイン前、中央と右でゼロイン調整しました。
その後6〜10mを撃った後に、5mをセンター照準で撃ったのが下段です。下段の左下は赤箱、右下はG&G0.28gです。
今回はドロップ量の計測なので、ゼロイン調整後は左右の微調整はしましたが、上下調整はしていません。
つまり、5mの6時照準でのセッティングで全計測を行ったという事です。
ちなみに×印が狙点、6発の上下の平均値は目分量で「だいたいこの辺じゃないかな?」という良く言えばアナログな、悪く言えばいい加減な測り方です^^;
6mです。左が6時、右がセンター照準です。狙点より3.3〜9.8ミリ上に着弾してます。
5mより3.3〜4.7mmくらい落ちるかな、という程度なので、狙点は5mと同じか、気持ち上げる程度で良いかと思います。
7mでは狙点から0〜3.4mm上に着弾しています。この程度ならセンター照準に切り替えれば狙点調整は不要かも知れません。
8mでは0.9mm上に着弾したり、8.2mm下にドロップしたり、グルーピングもだいぶ広がってきました。
この位の距離から視力の低さが影響してきました。黒丸がボヤーッとしか見えてません。
9mでは完全にドロップ傾向ですね。狙点から約12.3〜12.6mmドロップしました。
センター照準でターゲット上端を狙う、という感じでしょうか。
右の集弾が良いのは単なるまぐれです(TT)
10mでの1回目、6時照準の方は酷いですね。左に跳んだのはヒューマンエラーとして、1発は下に落ち過ぎたようです。
ドロップ量としては、25.4〜29.9mm落ちたので、センター照準の場合でシルエットターゲット1個分弱ドロップしました。
という事は、ノッチタイプのサイトの場合、ターゲットは完全にフロントサイトの影になって見えなくなる計算です。
これは難しいですね(^^;;
点数配分は6・7・8・9・10mの順に2・3・4・5・6点です。
満射を狙うような人達以外は、10mに拘り過ぎない方が良いかも知れません。
狙点まとめ
次に、この個体(0.818j・赤箱使用・5m6時照準ゼロイン)での狙点をまとめておきます。
・6m
6mではセンター照準より6.55mm上に着弾するので、3センチの標的の下1/4と下1/3の間を狙います。
・7m
7mではセンター照準より1.7mm上に着弾するので、とりあえずセンター照準。
・8m
8mではセンター照準より3.65mm下に着弾するので、センターより上に1/5〜1/4程度上げます。
・9m
9mではセンター照準より12.45mm下に着弾するので、フロントサイトの上端から標的が少し(2.55mm)見えるかどうか。
・10m
10mではセンター照準より27.65mm下に着弾するので、まずフロントサイトとリアサイトの隙間から高さを見て標的1個分上を狙います。次は、そーっと横にズラしてフロントサイトで標的を隠します。後は運です^^;
ここでは分かり易いように標的とサイトを近付けて撮影しましたが、実際には遠い的、特に10mは完全に見えなくなります。
ドロップ量まとめ
6時照準にしたりセンター照準にしたりと狙点を変えながら撃ったので、ちょっと分かりにくかったかも知れませんね。
「で?結局、何mで何ミリ落ちるの?」について、今回の実射データを元に一覧にしてみます。
狙点より何ミリ上に着弾したか?を便宜上「着弾上昇幅」と呼ぶ事にします。
5mゼロイン後の赤箱だけでの着弾上昇幅は、8.5・13.1・8.0なのでこの3つの平均値は約9.87です。
同じように6〜10mでの着弾上昇幅の平均値から9.87を差し引いた値を算出します。全てマイナスの値になるのでマイナス記号は省略します。
5mからのドロップ量は
- 6m=3.32
- 7m=8.17
- 8m=13.52
- 9m=22.32
- 10m=37.52(mm)
という結果になりました。
この値が5mでの着弾点と比べて、何ミリ落下したか?という純粋なドロップ量です。
標的は3×3センチですから、センター照準で5mゼロインした銃の場合、9mまでならギリギリ、標的の上端が見える事になります。(理論上は)
10mのターゲットが見えるようにするには?
今回の弾は赤箱を使いましたが製造終了しちゃいましたね。代わりの弾を何にするか?についてはBB弾カタログを参考にしてみて下さい↓
以上のデータは赤箱、つまり0.29gでブルズアイ・プレート・シルエットの3競技をオープンサイトで撃つ事を前提にしています。
ただ、これでは10m地点の標的は例え6時照準のセッティングでも見えません。
とは言え競技中にエレベーション調整を弄ったりはしたくありません。
何とか見えるようにする方法は無いか?考えてみました。
APS-3なら使える”あの方法”もある事はあるんですが、今回は他の方法を模索してみます。
10mは弾の精度も必要な距離なので、ここは何としても赤箱を使いたい。
となれば、10mを赤箱で狙えるようにゼロインして、プレートやブルズアイはもっと重い弾を使ってプレートの6mやブルズアイの5mでちょうど良い高さまで落ちるように弾を変える事で調整してはどうか?と、思い付きました。
超重量弾を使う方法
その時に使う弾は、現時点で流通しているBB弾メーカーとしては超重量弾のレパートリーが最多のBLSが最有力候補です。
最も重い弾は私がAPSライフルで愛用している0.48g弾です。10mでの集弾性の自己ベストを叩き出した弾です。詳しくはこちら↓
この弾、Amazonでも売ってました。↓
実はもっと重い0.50gという弾もあるにはあるんですが、コストダウンの為にステンレスの粉が配合されており、磁石にくっ付くのでAPSのレギュレーションに抵触する為、競技では使えません。
ステンレス粉が配合されている弾では商品名に
BLS Ultimate Heavy Precision 精密プラスティックBB弾(+SUS) 0.50g 1000発(500g)
というように (+SUS) という表記がある場合が殆どです。また、弾の色は灰色です。
Amazonの商品紹介欄には
ここから抜粋↓
BLS Ultimate Heavy Precision 精密プラスティックBB弾(+SUS) 0.50g 1000発(500g)です。
世界中のエアソフトメーカーへOEM提供しているBB弾メーカー「BLS」製BB弾です。
Precisionシリーズは精密度にこだわって製造されるプラスティックBB弾シリーズです。ステンレスパウダーが配合されており、樹脂のみのBB弾よりコストを抑えて重量化に成功しています。バイオでは無いので自宅やインドフィールド、シューティング競技用としてご使用ください。
※バイオではありません。アウトドアフィールドでは使用できませんのでご注意ください。
※磁石にひっつきます。スチールバレルなどとは相性はよくなく、弾道に影響が出る可能性があります。
↑ここまで抜粋
と書いてあります。
BLSの場合に限ってですが、ステンレス粉が入っていない純粋なプラ弾の場合は「ステンレス」「磁石」等の表記は無く、弾の色は「灰色」ではなく「白またはアイボリー」です。
「磁石に付く弾⁉︎」なんて聞くと、色んな意味で心配される方も居ると思いますが、買う側が目的に合った物をちゃんと選んで買えば、BLSの弾は値段の割によく中たる、コスパの良い弾だと思います。
APSの為の超重量弾(BLS)ラインナップ
とりあえずステンレス粉入りは除外して、今回の使用目的であるAPSの為のプラ弾のラインナップを一覧にしてみました。
今回の「敢えてドロップさせる」という使用目的を考慮し、赤箱(0.29g)より軽い弾や、保管方法次第で高精度を保てなくなるバイオ弾も除外しました。
すると選択肢としては、
30、32、36、40、43、45、48g(0.は省略)の7種類です。
尚、40と43についてはステンレス粉入りの製品も流通しているので、前述したように(+SUS)「ステンレス」「磁石」「灰色」の表記で判断して下さい。
念の為、その7種類「ステンレス粉の入っていないAPS競技で使用可能なプラ弾」のリンクを貼っておきます。
0.30g
0.32g
0.36g
0.40g
0.43g
0.45g
0.48g
これだけ種類があれば、丁度良い塩梅に落下する重さがありそうですね。
次の公式には間に合わなそうですが、いずれ試してみたいと思います(^^)
まとめ
APSハンドガンのシルエットとAPSライフルのムーバーは「何処を狙えば良いのか?」という事前のデータ取りが必要な種目だと思います。
何処を撃ったら良いかも全く分からず、全然中たらなかったら凹みますからね。
優勝を狙うような人達はともかく、私のようなレベルなら無理して10mのターゲットを狙うより、もっと近いターゲットやブルズやプレートをミスなく中たるように練習した方が成績は上がるような気がします。
ただ・・・気持ち良いんですよ・・遠くに小さくしか見えない標的が「キイィ〜ン」という澄み渡る快音と共に空中を弾け飛ぶ様を眺めるのが・・・
ドロップ量を計算するというプロセスを楽しめるのもAPS競技の中ではシルエットだけです。
欲を言えばドロップ計算は、ミルドットレティクルを見ながらやると気分も盛り上がるんですが・・・
これはAPSハンドガンでは無理ですね(^^;;
完全に違う競技になってしまいます。
ハンドガン・ライフル共に第3の種目、シルエット・ムーバーは、単純に銃が止まれば良いだけではない独特のコツがあって面白いです。
やった事の無い方は、別にAPS競技銃じゃなくても良いので、シルエットやムーバーが撃てるレンジに行って体験してみて下さい。
そんなの何処で出来るの?という方はこの記事でレンジについても触れています↓
では今回はこの辺で(^^)
(前述した通り、今回のデータは精度があまり高くありません。あくまで参考程度、と思って下さい)
後日追記
先日の公式記録会でライフルに続きハンドガンもシャープシューターになりました。
これ、今回調べたシルエットが中たった訳じゃなく、ブルズが練習より上手くいったからです。
プレートに至っては、下段(下段は標的が大きくて中てやすい)を全部外す⁉︎という偉業を成し遂げました(^^;;
たまにフロンティアにプレートの練習に行く事もありますが、下段全滅は初体験です。競技中に笑っちゃいました。
APSって、練習量と成績が比例するような気がします。自宅ではブルズの練習が多くなるので、練習量通りの結果になったようです。
ブルズに全てを賭けるか、プレートやシルエットの練習方法を工夫するか、幸せな悩みは尽きません(^^)
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