![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2022/04/img_8518-1024x393.jpg)
概要
今回はマルゼンAPSライフルの決定版SR96のトリガーボックスの分解を写真付で解説します。
以前、その4まで更新したSR96-11S(現在はスコープ仕様)の命中精度向上計画シリーズを再開します。続編の今回はその5です。
今回のトリガーボックス分解は、今後のカスタムの下準備として普通にメンテナンスするのでカスタムしない方にもメンテナンス記事として読んで頂けたらと思います。
シリンダーやチャンバー等と違ってトリガーボックス内部は、銃毎に構造やパーツ配置が違っていたり細かいパーツが多かったりして
初めて分解・組み立てをする時に「この変な形のパーツ、何処に付いてたっけ??」と困惑しやすい部分だと思います。
また、精密射撃は「トリガーが軽く引けてシアーがスムーズに落ちる事」が点数にも影響する重要メンテ項目だと思います。
ハンドガンの場合、トリガーの重さはそのまま銃の揺れに繋がる事は容易に想像出来ます。それならライフルの場合は関係ないのかな?と以前は思っていました。
ところが、トリガーが重いとグリップを通して揺れるのではなく、指に力が入り過ぎた瞬間に大胸筋も僅かに緊張してバットプレートが少し揺れるような気がします。
揺れると言うか、バットプレートを大胸筋が僅かに押してしまうような感触が・・・
個人的な感想なので、下手糞なだけだろ!と言われれば返す言葉もありませんが(TT)
APS-3のシアーメンテではあきゅらぼの池上さんのブログにお世話になりましたが、SR96のメンテに関するブログや動画が見つからなかったので自分で書く事にしました。
- 中古で買った
- ノーメンテで使い続けている
- 最近トリガーが重くなった気がする
こんな場合には試しにトリガーボックス内部のグリスアップをしてみて下さい。内部の汚れが原因だった場合は、とても気持ち良く引けるトリガーになります。
作業開始
作業中に細かいパーツを保管する小物入れが無い場合は、次項の「分解作業おすすめ用品」をご覧下さい。
ストックと機関部の脱着は説明書にも書いてあるし、機関部からトリガーボックスを外す工程は前後2本のプラスビスを外すだけなので端折ります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0322-1024x768.jpg)
まずはセーフティレバーを外しますが、セーフティレバーは外さなくてもシアーの分解は可能です。セーフティの動きが渋い場合にグリスアップします。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0323-1024x609.jpg)
ビス2本を外すとセーフティレバーが外れます。グリスはレバー裏側の凹み部分に塗ります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0331-1024x388.jpg)
レバーにクリック感を出す為のプランジャーがあります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0332-1024x958.jpg)
中にプランジャースプリングが入っているので飛ばさないように注意しましょう。プランジャー、スプリング、プランジャーの穴をパーツクリーナーと歯ブラシで洗浄します。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0333-1024x293.jpg)
プランジャースプリングは螺旋形です。組む時は向きに注意します。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0323-1024x609.jpg)
ボックス本体の分解は3つの穴の奥にあるプラスビスを外すと左右2分割できます。内部のスプリングを飛ばさないようにゆっくり分割します。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0327-1024x461.jpg)
分割するとシアーA・シアーB・トリガーベース・トリガーロック・インナーセーフティが表れます。
各パーツにそれぞれスプリングが1個、シアーAのみ2個付いています。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0328-1024x741.jpg)
組み立て時に迷ったらこの写真をよく見て下さい。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0329-1024x814.jpg)
斜め下から見たところ。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0330-1024x647.jpg)
斜め上から。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0334-1024x792.jpg)
ではひとつずつ外していきます。外す時に少し動かしてみて何処で摩擦が起きるのか観察しながらバラします。
まずは右上のパーツから。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0337-1024x896.jpg)
これがシアーAです。組み立て時にもう一度、このスプリング取り付け角度を見て下さい。トリガーボックスと機関部本体を組み合わせる際に右側のリターンスプリングをこの角度にします。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0336-1024x776.jpg)
同じように左側はこの角度です。つまり組み付け時にリターンスプリングを上から見ると右が後ろ、左が前に傾斜した状態になります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0338-1024x427.jpg)
シアーAをバラすとこんな感じ。洗浄ポイントは全部。グリスポイントは全部、もしくはシャフト周りと上下の爪の部分です。
端的に言えば他のパーツと擦れる部分がグリスアップポイントです。
リターンスプリングの形が左右で少し違いますが、組む時に失敗して曲がっちゃいました。この程度の曲がりなら動作に支障ありません。本来は左右同じ形です。
シアーAの下端部を少しだけ削ると引き幅が短くなる筈です。予備パーツを買ったら試してみます。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0339-1024x712.jpg)
次はいちばん長い棒のようなパーツ、シアーBです。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0340-1024x447.jpg)
シアーBはこんな感じ。SR96はこのシャフトに硬質素材を採用したのでタイト設計が可能になりダイレクト感のあるトリガータッチになりました。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2021/10/img_7516-1024x429.jpg)
トリガーを引き比べてみると確かに違います。LE2021ウッドよりSR96の方がセカンドステージが何処から始まるのか分かり易いです。
この変更点について参考にさせて頂いたのはバトンさんのブログです↓
![](https://img01.militaryblog.jp/usr/g/u/n/gunsmithbaton/CC1A1012.jpg)
このメーカー純正カスタム!APS-3で言えばLEモデルみたいですね。マルゼンが本気で「競技銃」を作ったんだな!と思いました。
本来ならウッドの方がLEの筈なんですが・・・
言い方を変えれば、ウッドの方がファーストとセカンドの引きの重さの差が少ないとも言えます。その方が好みな人も居るでしょうね。
シアーBのスプリングを少しだけカットして引きを軽くする事も出来そうですが、これも予備パーツを買ってから試してみたいと思っています。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0341-1024x727.jpg)
次にトリガーベースを外します。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0342-1024x741.jpg)
横着してトリガーを付けたままトリガーベースを外しました。セーフティレバーと同様、トリガーを外さなくてもグリスアップは可能です。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0343-1024x744.jpg)
スプリングとシャフトは外します。シャフトとシャフト穴はグリスアップ重要ポイントです。
最上部のシアーBと接触する黒いシャフトは圧入してあると思います。金属疲労を考えると不必要な圧入作業はしない方が良いでしょうから今回は清掃とグリスアップのみにします。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0344-1024x505.jpg)
残った2つはトリガーロックとインナーセーフティです。
ボルトが完全に閉鎖していないと撃てないようにする為の安全装置系のパーツです。
つまり、これが無くても普通に発射できます。ボルト閉鎖が不十分でも撃ててしまう、という事です。
ただ、閉鎖が不十分だと命中精度が下がりそうですが。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0345-1024x185.jpg)
トリガーロックを外すとスプリングとシャフトが一緒に外れるので飛ばさないように注意して下さい。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0346-1024x209.jpg)
トリガーロックを裏から見るとインナーセーフティと組み合わさる形状になっているのが分かります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0347-1024x536.jpg)
最後はインナーセーフティですが、
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0348-1024x718.jpg)
これもスプリングを飛ばさないように注意が必要です。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0349-1024x417.jpg)
裏側にスプリングが嵌まる溝があります。
このインナーセーフティのスプリングとシアーAの左右に付いているスプリングは要注意です。
トリガーボックスと機関部本体を組み立てる際に、よく注意していないとボックスと本体の間にスプリングが挟まってグニャグニャになります。
私はインナーセーフティのスプリングは1回、シアーAのスプリングは2回、マルゼンに買いに行きました。
これでトリガーボックスの分解は終了です。後は洗浄してグリスを塗って組み立てるだけです。
分解作業おすすめ用品
初めての方に特にオススメしたいのが小物入れです。
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外した順番にまとめて小分けにしておけば「ここに入れるパーツどれだっけ?」と混乱せずに済みます。
それに初めてだと迷いながら作業するから時間が掛かりますよね。「やっと途中までバラしたけど、そろそろ寝ないと・・・」なんて時でも、綺麗に小分けされていれば「続きは明日にしよう」と作業を中断する事が出来ます。
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![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0359-1024x768.jpg)
パーツを洗浄する時にはプラスチックパーツを侵さないパーツクリーナーがお勧めです。これを噴いて歯ブラシで擦れば大抵の汚れは落ちます。
シャフト穴の中も細い紐などを通して洗浄しましょう。トリガーの軽さに大きく影響します。
石鹸や中性洗剤でも良いんですが、手がヌルヌルになってパーツを落としたり、水気を拭き取って乾燥させたり、少し手間が掛かります。
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![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2020/07/img_4710-1024x768.jpg)
洗浄が終わったらグリスを塗ります。VSRのピストンやAPS-3のシアーにも使ったシリコングリスです。安物ですがエアガンに使う程度なら充分です。
塗る場所はシャフト等の回転部分やシアーが擦れる摺動面です。
比較的小さいパーツばかりだしトリガーボックスの内部なので、何処に塗るのか分からなければ、シャフトやシアーのパーツ全体に薄く塗り伸ばしてやるだけでも良いと思います。
余計な抵抗を増やさず被膜を作る事が重要なので薄過ぎる分には問題ありません。
シリコングリスを選んだのは、プラスチックやゴムに付着しても問題ないので扱いやすいからです。
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今回、トリガーボックスをバラした本当の目的
このSR96、約3ヶ月前にシアーのグリスアップをしたばかりなので内部の汚れがまだ少なく、グリスアップ後のトリガータッチの変化は殆どありませんでした。
グリスアップだけが目的なら1年位経つまでやらなかったと思います。
今回バラしたのは、これを組み込む為です。
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蔵前工房舎の「SR-96用ネジ穴加工済みセットピン」です。蔵前工房舎のサイトで見てみる↓
![](https://image1.shopserve.jp/kuwata-koubousha.com/pic-labo/simg/CC1A1055.jpg)
今まではシリンダーを取り外す為に毎回トリガーボックスを機関部本体から取り外していました。
シリンダーを外すのがたまになら我慢出来る程度の手間なんですが、今回シリンダーチューニングをもう1段階進める事になりました。
おそらくセッティングが出るまでに20回以上シリンダーをバラす事になるでしょう。
その度にシアーAスプリングを挟み込まないように注意しながら組み立てるのは流石に面倒臭いので、簡単にシリンダーを外せるようにしたかったんです。
シリンダーチューニングについては次回以降にお話しします。
セットピンは普通に使っているだけでも磨耗して側面に溝のような傷が入ります。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0352-1024x391.jpg)
上がノーマル、下が蔵前セットピン。蔵前の方は引き抜く時に使うM3のボルトが入っています。
![](https://gun.odaryuji.com/wp-content/uploads/2023/07/img_0354-1024x406.jpg)
反対側も同様に傷が入っています。
構造は単純に純正セットピンの底部にM3のネジ穴を切っただけですが、ノーマルセットピンが既に磨耗してたし、正確に真っ直ぐ穴を開けないと強度が落ちそうだったので手っ取り早く買っちゃいました。
まとめ
今回はSR96の基礎メンテとしてトリガーボックスを分解しました。
シアーのグリスアップはチューニングというよりメンテナンスですがトリガーの軽さは立射での命中精度に影響するので敢えて命中精度向上計画シリーズに入れました。
どれだけ静止出来るか?を競う競技で唯一動く所ですからね。その動きに強い筋力が必要だったら共同筋や拮抗筋も影響を受けて銃の揺れに繋がります。
個人的な感想ですが、SR96の分解・組み立て工程で比較的難易度が高いのがトリガーボックスだと思います。
トリガーボックスの組み立てが出来るならチャンバーやシリンダーは専用工具があれば簡単です。
トリガーボックスだって緊張するのは最初だけです。一度覚えてしまえば難しくありません。
特に撃ちっぱなし放ったらかしの場合、掃除してグリスを塗るだけで劇的に軽くなるトリガーに感動すると思います。パーツ寿命も上がりますしね。
そしてその先にはスペアのシアーを取り寄せて、シアーと棒ヤスリを並べてニヤニヤする楽しい楽しい底なし沼が広がっています(^^)
そんな事してる間に少しでも練習した方が上手くなるんでしょうけどね・・・銃の性能を上げれば点数が上がるなんて、既に銃の性能を100%引き出せているトップレベルの人達だけでしょう。
それでも、自分の銃が思った通りに仕上がっていくのは気持ち良いもんです。
良い銃があるんだから自分が銃のレベルに追いつかなきゃ、というモチベーションにもなると思います。
今回の命中精度向上計画はこの後数回に分けてバレル・チャンバー・シリンダーに手を入れる予定です。
では今回はこの辺で(^^)/~~~
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